【Let’s Discuss!】No.8

コラム

みなさんと語り合いたいあれこれ、今日は感情というものにアプローチしてみたいと思います。

人間の感情をすべて描き出した、とよく表現されるシェイクスピア

英文学者で演劇評論家の小田島雄志さんは著書『シェイクスピアの人間学』の冒頭で、「世界中がシェイクスピア好きになれば戦争は起こらない」と述べられています。

私たちNVP平和教育プログラムの中で“感情”はとても大切にしているテーマ。

プログラムではまず自分自身の感情に対して意識を持つように働きかけることから始めています。

感情って、半ば無意識的に、コントロールできないうちに外に飛び出てしまっていることが往々にしてあります。

しまった、と思っても時すでに遅し。自分の感情は自分の意志を飛び越えて、もしくは追い越して、相手に何らかのメッセージを送ってしまっているのです。

感情とはいったい何なのでしょうか。

改めて言葉で説明しようと思うと、実は本当に難しい。そう思いませんか?

そこでまずは先人たちがこのやっかいな感情というものをどのようにとらえてきたのか、少し調べてみました。

すると感情についての議論はギリシア哲学に端を見る、との記述を見つけました(『感情を知る』福田正治氏著)。

ギリシア哲学??? 紀元前の学問ですよ、古代ギリシア!!!

この時代に、プラトン(古代ギリシアの哲学者。紀元前427年~紀元前347年)は快楽、苦痛、恐怖や欲望についての考察をしていたとの記録が残っているらしいです。

アリストテレス(古代ギリシアの哲学者。紀元前384年~紀元前322年)は怒り、温和、友愛、憎しみ、大胆、憐れみ、妬みなどについて語っていたそうです。

アリストテレスと言えば、そう、“哲学”の祖と言われる人物で、人間の本性は「知を愛する」ことにあると考えました。

「知を愛する」は、NVPのメッセージの一つ、Knowledge is Powerにも通じるところがあります。

彼は知を愛し、哲学から自然科学、心理学…と幅広い分野を学問として体系立てて展開し、「万学の祖」とも呼ばれていますね。

さて、かように感情は古代から強い興味を持たれてきたのです。

誰にでも、どこにでも存在し、いつどのように現れるかもわからなくて、そしていつどのように消えるかもまたわからない、得体のしれないもの。

人間自身にはコントロールできないもの、だからこそ神秘的で解き明かしてみたくなるもの…。

それが感情というものなのです。

感情はその後も心理学、動物行動学、宗教などの視点からアプローチがなされ、今ではあらゆる学問分野で取り上げられています。

ちなみに私たちがよく使う「喜怒哀楽」という言葉は、儒教において感情の区分を喜・怒・哀・慴(おそれる)・愛・悪(にくむ)・欲の七つに分類したところから出ているそう。

なぜ四つに絞り込まれたのかはわかりませんが…。

現在では、人間の基本の感情をいくつかに分類して説明することが多いようです。

たとえば大きく四つに分類するもの、五つとするもの、六大感情とするもの、そして八つに分類するものなどなど。

ちなみに一番よく使われていると言われる八大感情とは、喜び・信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・期待とされています。

1980年にはアメリカの心理学者、ロバート・プルチックが八大感情を図式化した「感情の輪」という有名な図を提示しています。

さて、基本感情についての議論は専門家に任せるとして。

私たちのプログラムでは、まずは自分の感情を意識すること、つまり感情の存在に意識を向けること、そしてその奥に潜むニーズを探ってみることを大切にしています。

感情にはどんなものがあるのか、それを普段自分はどのように表現しているのか。

人はどのように表現しているのか。

私たちは相手の感情をきちんと読み取り、感じ取れているのか?

もしかしたら、相手の感情を正しく理解できていなかったのではないか?

自分の感情を正しく相手に伝えきれていなかったのではないか…。

そして次に、ニーズというものについて考えていきます。

感情の奥には、本当のニーズがあるということ、お気づきですか?

感情は何らか、外に向かって出ていくものです。

でも、心の内部にはその感情を生み出し、創り出したニーズというものが潜んでいるのです。

例えば、北京オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ決勝、その二本目の滑降の得点に対して怒りという言葉を使った金メダリストの平野歩夢選手。

もちろん正確なところは本人、もしくは本人の心にしかわからないことだけれど、その怒り感情の奥には、《正当に自分の滑りを評価して認めてほしい》、というニーズがあったのではないでしょうか?

そのニーズが満たされないから、怒りという感情が噴き出てきたのでは?とあのインタビューを聞いていて感じました。

でも、平野選手の場合はその怒り感情が創り出したエネルギーを見事に三本目の滑りのパワーとして活かし、誰にも有無を言わせない金メダルの滑りを堂々と見せてくれたのですが。

誰かが感情をぶつけてきたとき、その感情の後ろに隠れている、相手が求めているもの(ニーズ)ってなになのか?と、少し考えてみるってどうでしょう?

相手が求めていることが少しでも理解でき、もしかしたらそれにこたえることができるとわかったら、この二人の人間関係は以前にもまして居心地のいいものになると思います。

逆に相手の求めていることが全然わからず、考えよう、探ろうともせず、相手の感情だけに真正面から向き合ったとしても、その感情をやわらげたり、軽くすることは難しいでしょう。

ここにコンフリクトの小さな種が生まれる可能性もゼロではないのです。

人間は文化的にも社会的にもいろいろと異なった環境で育ってきています。

ひとりとして同じ人間はいないのです。

それが意味するところは、ニーズも、それを表現する感情も百人いれば百様ある、ということです。

今回の北京オリンピックを観ていても、今まで歯が立たなかった競技で目覚ましい活躍を遂げている日本選手やチームがありますね。

つくづく日本も多様化しているのだなぁ、とこんなところでも感じます。

多様化とは、つまり価値観の多様化でもあり、人と人との間の“異なるメーター”の目盛りが大きくなるっていうことです。

多様化する社会を、いかにいいものにしていけるのか。

それは人間ひとりひとりが尊重される社会をつくること。

目指す未来を共有すること。平和で、笑顔溢れる、コンフリクトに真正面から向き合う社会。

私たちのプログラムは、そんな未来に向けて進んでいくためのテクニックを学べるものです。

そのポイントを感情の話からまとめると…。

自分の感情を豊かに表現し、相手に自分のニーズに気づいてもらえるようにすること、そして何よりも自分のニーズに気づくこと。

相手の感情を豊かに受けとめて、相手のニーズを見つけ出すこと、相手のニーズを尊重すること。

そしてお互いに、お互いのために何が一番いい方法なのか、いい選択なのか、じっくりと考え、意見を交わして選び取っていくことなどを学ぶことができます。

ニーズについては、NVPはアメリカの心理学者、アブラハム・マズローの理論をベースにしています。

このお話はまた次回にぜひ一緒に考えてみたいと思います。

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