みなさんと語り合いたいあれこれ、今日はNVPのロールモデルの一人、キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)の功績と人種差別にかかわるお話を。
昨日、2022年1月17日はアメリカ合衆国の国民の祝日に制定されている「キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)記念日」でした。
国民の祝日ですから株式市場もお休み、アメリカが丸一日、経済活動を休止するほどキング牧師は国の歴史上、重要な人物ということです。
日本では、人物が冠されて国民の祝日となっているのは天皇誕生日だけ。
それも、どちらかというと特定の“個人”をたたえた祝日ではなく、“天皇”という存在の誕生日を祝うものです。
ちなみにアメリカの国民の祝日では、キング牧師以外にはPresident’s Dayとして、ジョージ・ワシントンとエイブラハム・リンカーン2人の大統領の誕生日を記念したものと、イタリアの探検家クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に最初に到着したことを記念するColumbus Dayがあります。
アメリカはご存じの通り、奴隷制に始まり、アフリカ系アメリカ人に対する人種差別がさまざまなかたちで堂々と取られてきた歴史を持つ国。
黒人をはじめとする有色人種はアメリカで本当に本当に長く、辛く、屈辱的な歴史を歩んできていますよね。
1863年にリンカーン大統領が発した奴隷解放宣言。
奴隷制は廃止され、アフリカ系アメリカ人は奴隷のくびきから解放されたのですが、それは人種差別の撤廃にはつながりませんでした。
日本で2019年に公開された『グリーンブック』という映画をご覧になった方も多いと思います。あの映画で描かれていた、黒人に対するあまりにも冷然と、しかも何の躊躇もなく堂々と取られた差別態度、あれがずっと居座り続けたのです。
ちなみに筆者はあの映画を見るまで、お恥ずかしながらグリーンブックの存在を知りませんでした…。
筆者同様、ご存じない方がいらっしゃるかもしれないので、ここでグリーンブックについて簡単に。
グリーン、の意味するところは「緑」ではなく人名で、1930年代にニューヨーク・ハーレムの黒人郵便局員だったVictor Hugo Green氏(1892-1960)が、黒人旅行者のために1936~1966年にかけて出版した、黒人のための旅行ガイドです。
正式名称は『The Negro Travelers’ Green Book』で、『Green Book』は通称です。
当時、アメリカでは裕福な黒人は自家用車を所有するようになっていたのですが、グリーンブックが出版された当時は、とくにアメリカ南部諸州で制定されていたジム・クロウ法と呼ばれる、黒人および非白人に対する人種隔離政策によって、黒人をはじめとする有色人種はひどい扱いを随所で受けていました。
一例を紹介すると、レストランも電車もバスも席やエリアは明確に分けられ、車への給油やホテルでの宿泊は断られ、学校や病院についても厳しい制限が設けられる…。
そして黒人をはじめとした有色人種はそれに従わない場合、逮捕されてしまう…。
グリーン氏は、第一版序文にこのように記しています。
「いつか近い将来、このガイドブックが発行されなくなる時が来るでしょう。その時こそ、一つの人種としてのわれわれが、合衆国において権利と特権を平等に手にする時なのです」。
さて、キング牧師に戻りましょう。
このようなアメリカの状況に対して、動き出したのがキング牧師です。
当時、いろいろなところで発生していたいくつもの黒人を迫害する事件が彼を動かしました。
キング牧師が提唱した運動、その特徴は徹底した「非暴力主義」でした。
彼は、インドを独立に導いたマハトマ・ガンディーに啓蒙され、また牧師としての素養も加わり、非暴力を貫きました。
ちなみにマハトマ・ガンディーもNVPのロールモデルの一人です。
一見、非暴力主義は無抵抗で弱腰にみなされがちですが、彼は「非暴力の抵抗を、大衆一般の不服従の表明に発展させる。そして、支配者たちが口にする“黒人は現状に満足している”という言葉が嘘であることを全世界に証明してみせる」と宣言しています。
彼の行動を詳しく追っていくとエンドレスになってしまうので、特に世界中に感動を与えた演説“I Have a Dream”を見てみましょう。
これは1961年にジョン・F・ケネディが大統領就任の際に行った演説と並んで20世紀を代表する名演説といわれているものです。
奴隷解放宣言から100年となる1963年8月28日、20万人を超える参加者を集めて行われたワシントン大行進。これにはボブ・ディラン、マーロン・ブランド、ハリー・ベラフォンテ、ジョセフィン・ベーカーら著名人や公民権運動家なども参加していました。
キングは、ワシントンD.C.のリンカーン記念堂前のワシントン記念塔広場で“I Have a Dream”を含む演説を行っています。
“I Have a Dream”の冒頭では、リンカーンが発した奴隷解放宣言から100年を経ても、黒人の生活は依然として人種隔離の手かせと人種差別の鎖によって縛られている、と訴えます。
この事態を解決しなければ、反乱の旋風は吹き続け、この国の土台を揺るがし続ける、と。
続く演説の中で、彼はこのような内容を述べます。
『同胞たちに言わなければならないことがある。
われわれは不正な行為を犯してはならない。
敵意と憎悪の盃を干すことで、自由への渇きを癒そうとせず、絶えず尊厳と規律の高い次元での闘争を展開しなければならない。
われわれの創造的な抗議を、肉体的暴力へ堕落させてはいけない。
われわれの闘志が、白人に対する不信につながることはあってはならない。
白人の運命がわれわれの運命と結びついていること、白人の自由がわれわれの自由と分かちがたく結びついていることを認識するからだ。
われわれはたった一人で歩くことはできないからだ。』
まだまだ演説は続き、最後に彼は“I Have a Dream”というフレーズを何度も繰り返して人種平等社会のあるべき姿を、その実現を力強く、同胞である黒人たちに、そして自分たちを迫害し続ける白人たちに対しても訴えたのです。
この演説には私たちが学ぶべきことがあふれています。
NVPのプログラムに盛り込まれているものと同じメッセージがあります。
人種差別は、恐ろしい暴力です。
差別するほうも、されるほうもそれをきちんと認識して、キング牧師が訴えたようにどのように解決すれば、社会が真の平等を手に入れられるのか、考え、心にとどめておく必要がありますね。
年に一回、キング牧師記念日には、せめて人種差別についてみんなで話しあいたいものです!!
最後に、NVPのトレーナー養成講習会のご案内です。
NVPのトレーナーは、若者と子どもたちにNVPの平和教育を伝授していただく方々のことです。
今年初めての講習会を2月に二日間、開催します。
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