【Let’s Discuss!】No.10

コラム

みなさんと語り合いたいあれこれ、先週に続いて“人間のニーズ”にアプローチしていきます。

先週はマズロー人間主義心理学、とくに欲求階層を途中まで見てきました。

一番低次で、そして一番強力な生理的ニーズ、次にあらわれる安全ニーズ、社会の一員として出現してくる愛・帰属ニーズ…。

このあとに続く自己肯定(セルフ・エスティーム)ニーズ自己実現ニーズとはどんなものか見ていこうと思うのですが、その前にこの階層論について少し整理してみます。

前回、内容を考えてみた三つのニーズですが、これらの区分ってそれほど明確じゃないな、という印象を持っています。

例えば、小さな子供が何か怖いものを目にしてお母さんに縋りつく、という場面を想定してみてください。

これは真っ先に思いつくのは安全ニーズから出た行動だな、ということですよね。

でも同時にそれはお母さんの愛情を求めるニーズから出たものとも言うこともできませんか。

もう一つ、妹が生まれた女の子が、お母さんが自分に向けてくれていた愛情を妹に取られるのではないか、と不安をいだくケース。

これはお母さんからの愛情を妹に奪われ、自分のニーズが満たされなくなるのではないか、という不安。ですが、もう一方でこの不安を取り除きたい、という安全ニーズとも言えるのです。

こんなふうに、明確に区分することができないのがニーズというものなのだと感じています。

また、マズロー欲求階層論の視点とは異なる視点からもニーズを語っています。

それが欠乏ニーズ成長ニーズというもの。

これ、とても分かりやすく、ニーズを理解する上でもいい道標となると思うので少し紹介しますね。

欠乏ニーズとは、マズローによると精神的もしくは身体的に何かが足りない状態になってしまって、その状態が人間に与えるニーズ。“欠乏が人間を動かす”という構造ですね。

他方、成長ニーズは自分が持つエネルギーを外に向けることで、成長のステップにしよう、という動きだそうです。

つまり、人間が“自ら動きださないと何も始まらない”という代物。

もうわかりますよね。欠乏ニーズ欲求階層論でいうと低次のニーズにあたり、それが上の層に行くほど成長ニーズがないと現れてこないもの、ということです。

人間が自らの意志で生み出すニーズ。これが人間の成長と大きなかかわりを持つことは容易に想像がつきますよね。

さて、欲求階層論に戻って、第四の自己肯定(セルフ・エスエスティーム)ニーズを見てみましょう。

これは「自分が素晴らしい人間であると信じたい」「人から大切な人間だと尊重されたい」「自分を高く位置付けたい」「何かを達成したい」「人から自分の価値を認められたい」…などなど、さまざまな形で現れます。

このニーズは、「人に尊重される」とともに「自分を尊重する」こと、「人に認められる」とともに「自分を認める」ことで初めてかなうもの。

そしてこのニーズは、欠乏が気づかせてくれる性格のものではありません。

自らが、そうなりたい、と願い、自分の意志で作り出す成長ニーズなのです。

人から尊重され、認められる、とともに自分を尊重し、認めることで同時に人をも尊重し、人を認めたい、と思い、行動するようになるのです。

これが私たちが重要視する成長ニーズであるセルフ・エスティームなのです。

生理的ニーズから始まり、安全ニーズ、第三の愛・帰属ニーズまでは欠乏ニーズの力が強く、人や外界から与えられるもので満たされていく側面が強いものですよね。

しかしこの第四のニーズ自己肯定(セルフ・エスティーム)ニーズは自らの意志で創り出すニーズ、という点において人間の成長をぐっと後押しするものなのです。

そしてマズロー欲求階層論に則れば、自己実現へと導くとても大切なニーズでもあります。

私たちはだからこそ、子どもと若者たちにセルフ・エスティームというものがもつ力に気づいてほしい、自ら意識してほしい、そしてそれを育ててほしいという願いを込めた教育プログラムの三つある重要なテーマの一つに置いています。

さて、この第四のニーズがある程度満たされてくると、マズローの理論では最後に自己実現ニーズが顔を出してきます。

さらに自分がこうありたいと思うこと、自分に最もふさわしいと思うこと、自分の力を最大限に発揮できると思うことをやろう、とする意欲が高まるのです。

これは自己肯定二ーズの段階で築かれてきたセルフ・エスティームに基づき、それぞれの世界観や価値観によってポジティブな思考・行動意欲が芽生え、そして具体的な行動がとられていくものです。

ところで、自己実現ニーズは果たして満たされることがあるのでしょうか。

これも各人の価値観に委ねられる問題なのでしょうね、きっと。

マズローもそこまでは言及していないようです。

一生をかけて自己実現を追求し続けることは素晴らしく充実した生き方だと思います。

私たちはこのニーズを、子どもと若者たちが人生の中で正面から追求してくれることを願いますし、そのベクトルが平和の実現に向けられることをも願っています。

最後になりますが、マズローニーズというものの概念を変えてくれた人物だと感じています。

以前には、ニーズというものは卑しいものであり、表に出すのは品格のない行動である、という風潮がありました。

それに対してマズローニーズを新しい価値を生み出すもの、人間性を高めるものだと教えてくれます。

マズローは、人間が低次の欠乏性のニーズのみに支配されていれば、人間社会においては限られた物質を取り合うことになり、相互に利害が対立することになると言います。

これが以前のニーズに対する否定的感覚の根拠だったのかもしれません。

でも人間がより高次のニーズを中心に生きる存在であれば、人間性は肯定され、ニーズを満たすことも積極的に進められるとマズローは言います。

「精神的本性は善であるか、それとも中立的なもので悪ではないのだから、これを抑えるよりも、むしろ引き出し、励ますようにするのがよい。もしこの精神的本性によって生活が導かれるのであれば、私たちは健康になり、生産的になり、幸福になる」。

ヒューマニズムに立脚したマズローのすてきなメッセージに乾杯。

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